第42回日本社会精神医学会
会長 鈴木 映二
東北医科薬科大学 医学部 精神科学教室 教授
このたび第42回日本社会精神医学学術総会を開催させていただくにあたり、ご挨拶申し上げます。
テーマは「社会に伝え貢献する精神医学」とさせていただきました。本学会に大きな足跡を残された広瀬徹也先生は、本学会が編集し2009年に発行した「社会精神医学」という本の中で、Leighton AH先生の著書を引用し、社会精神医学と呼びにふさわしい条件のひとつとして「社会精神医学は臨床で得られた知識を社会文化的システムの中のいろいろな戦略拠点に伝達することをその任務の一つとする」と述べています。
精神障害を持たれている方々は、民主主義においてマイノリティであり、資本主義においても弱者であります。したがって精神障害を持たれる方々の声は、そのほとんどが精神医療の段階でとどまってしまい社会に届いていないというのが現状ではないでしょうか。しかし、精神障害を持たれている方々の要求を単に社会に伝えればよいのかというと必ずしもそうではないとも考えております。それが社会に貢献するものでなければ、社会から耳を傾けてもらい、その文化システムの中に組み入れてもらうことはなかなか難しいのではないかと考えております。
本学会は、これまでにも、広い職種の参加を得て社会精神医学を広める目的で、看護師とコメディカルスタッフのための社会精神医学セミナーなど多彩な活動をしてまいりました。水野雅文新理事長のもと、さらに多方面へと活動の輪を広げております。第42回総会では、これらの活動がさらに活発になるよう、広い職種の方にお集まりいただき、活発に議論していただきたいと思います。また、精神障害を持たれている方々の中にも、社会精神医学に係る活動をされている方もおられますので、そのような方もお招きして、より相補的に発展できるような機会にしていただければと願っております。
令和5年3月吉日